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| 猪吉: | 今日はこれで 店の方は休みでござんすが。 へいへい 畏まりました! あっ 姐さん! |
| お万 : | 久しぶりだったねえ! |
| 猪吉: | よう 訪ねて来ておくんなすった! お元気で何よりでござんす。 |
| お万: | お前も 変わりがなく 何よりだったねえ。 |
| 猪吉: | 有難う 存知やす。 |
| お万 : | 外じゃないが お前も話は かねがね 風の便りで聞いているには違いない! 家の人が 赤城の山を追われた上 今じゃ 春日部で ばっつたり就いた 病の床 せめて そばに行って 看病の一つもしてやりたい 通り合わせたこの信濃路 お前の事を思い出した 堅気になっていてくれりゃいいがなあと思っていたが 立派な堅気の姿をみて わたしゃ これで 本望だよ! |
| 猪吉: | こんな堅気になれたのも みんな姐さん達のお陰だあ! この通り申しあげます。 |
| お万: | 何っ そりゃ おまえさんが真面目にやったからだ これから先も生涯 堅気を続けておくんなさいよ |
| 猪吉: | よく わかりやした! |
| お万 : | そうかい 達者でねえ |
| 猪吉: | 姐さん 待っておくんなささい 姐さん ここ今出たなりゃ 役人は鵜の目 鷹の目で 姐さんの事を探してるだ どうでござんしょう 一刻半刻でも ここで休んでいってやって おくんなせえ! |
| お万: | 何 おまえに迷惑をかけるつもりはありゃしない 元気な姿を見たら それで十分だと わたしゃ思っていたんだよ! |
| 猪吉: | 姐さん それじゃ いけないなあ この通りでござんす。 どうか一刻半刻でも かまわねえ ここで休んでいっておくんなせえ! |
| お万 : | そうかい おまえが そんなに 言ってくれるんだっだら それじゃ 暫く休ませてもらうかねえ |
| 猪吉 : | へい! |
| お万: | お前の子供かえ。 |
| 猪吉: | へい あっしとあいつの中にできた 子供でございます。 |
| お万: | そりゃ いいねえ |
| お万 : | 堅気になって 子供までいるんだ この幸せを決して離しちゃ いけないよ |
| 猪吉: | 良く 分かっておりやす! |
| お万: | そうだ! おまえの処で世話になろうと 思っていたが、思い出した用事があった! 改めて おまえの処に来るとして 今日は このまま 失礼するよ! |
| 猪吉: | 姐さん 待っておくんなせえ おめえさん 子供の泣き声聞いたなら 急に出て行くとおっしゃるが 姐さん そりゃ ねえぜえ そうじゃござんせんか 見てやっておくんなさいあっしゃねえ この刺青をした時から あっしゃ おまえさんの所の血が流れているんだ もしも おめえさんが これから出て行って 役人に捕まるような事があったなら おらあ 親分に申し訳がねえ ましてや 家の女房と言っていたんだ 俺達がこうして 堅気になって 幸せに暮らせるのも みんな 親分や姐さんがあればこそだと 姐さん お願いでござんす。 どうか その気持ちが 分かったなら 一刻半刻でも どうか 休んでいってやっておくんなさい。 |
| お万 : | 猪 お前の気持ちは 嬉しいが 私をたとえ 一刻半刻でも 匿うような事があったなら お前は同罪だ それで お前はいいだろうが 女房や子供にどうして 泣きを見せる事が できるんだよ |
| 猪吉: | 姐さん そんな心配はいらねえ 日ごろから 家の女房に言って聞かせてある 姐さんの為なら 親分の為なら 命を投げ出す気持ちでござんす。どうか 休んでいってやっておくんなさいまし。 |
| お万 : | 猪! |
| 猪吉: | へい! |
| お万: | たかが 小さい盃に 命を賭けた仲と思やこそ それ程までに 言って くれるのかい! |
| 猪吉: | 姐さん! |
| お万 : | 有り難いネエ 落ちぶれて 袖に涙のかかる時 人の心の奥ぞ知られる 猪! お前の情きゃ!! |
| 猪吉: | 姐さん! |
| お万 : | 忘れりゃしないよ |
| 売子: | ♪♪♪♪♪ あわじしま 通う千鳥の恋の つじうら おばさん つじうら 買って頂戴! |
| : | 。 |
| お万: | この雪の降る寒空に つじうらを売って歩いているのかえ。 |
| 売子: | そうなの 実は おっかさんが 病で寝込んでいて それで 薬代を稼いでいるのよ。 |
| お万: | そりゃ かわいそうに おばさんが 全部買ってあげるから こっちにお出し! |
| 売子: | うん 有難う おばさん! よかったわ これで おっかさんの薬が買えるわ おばさん 有難う ♪♪♪♪♪ あわじしま いけない 全部 売れたんだっけっ。 |
| お万: | ♪♪♪♪♪ あわじしま 通う千鳥の恋の つじうら |
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